膝を高く上げると足が遅くなる?年齢別の影響と成長曲線を徹底分析
- 森 雅昭(スポーツ家庭教師/かけっこ走り方教室/体操教室枚方市)
- 3月8日
- 読了時間: 4分
「膝を高く上げると足が遅くなるのか?」という疑問は、短距離走や運動能力向上に関心のある人にとって重要なテーマです。特に、子どもの年齢によってトレーニングの効果が異なるため、一概に「膝を高く上げる=良い」または「悪い」とは言えません。
この記事では、膝を高く上げる動作が走りに与える影響を分析し、年齢別のメリット・デメリット、さらには成長曲線に基づく効果的なトレーニング方法について詳しく解説します。
1. 膝を高く上げると足が遅くなるのか?
まず、「膝を高く上げること=足が遅くなる」という考えがどこから来ているのかを整理しましょう。
1-1. 膝を高く上げる動作の目的
膝を高く上げる動作(ハイニー・もも上げ)は、一般的に次の目的で行われます。
• ストライド(歩幅)を広げる
• 地面を強く蹴るための力を高める
• 股関節周りの柔軟性と筋力を向上させる
しかし、競技レベルのスプリンターを見ても、実際の走行中に極端にももを高く上げる選手は少なく、「適度な膝の高さ」が速く走るポイントになります。
1-2. 膝を高く上げすぎるデメリット
膝を過度に高く上げると、以下のデメリットが生じる可能性があります。
• 接地時間が長くなり、スピードが低下する
• 前傾姿勢が崩れ、無駄な上下動が増える
• ハムストリングス(太ももの裏)の負担が増し、ケガのリスクが上がる
実際のスプリントでは、膝を適度に上げながらも、接地時間を短くして前方への推進力を最大化することが重要です。
2. 子どもの年齢別に見る膝上げトレーニングの効果
子どもの成長段階に応じて、膝を高く上げる動作のトレーニング効果は異なります。ここでは、幼児期・小学生・中学生に分けて解説します。
2-1. 幼児期(3〜6歳)
【メリット】
• リズム感が身につく(走りの基礎作り)
• 体幹や股関節の柔軟性が向上する
• 走ること自体の楽しさを学べる
【デメリット】
• 過度なフォーム矯正は逆効果(自然な動きを重視すべき)
• 下半身の筋力が未発達なため、高い膝上げはバランスを崩しやすい
→ この時期は、遊び感覚でリズムよくもも上げを行う程度が最適。
2-2. 小学生(7〜12歳)
【メリット】
• 体幹が安定し、走りの基本動作を学べる
• 太ももや股関節の筋力強化につながる
• 接地の感覚が養われ、スプリントの基礎が身につく
【デメリット】
• 力みによる動作の硬さが出やすい
• 不必要に高く上げると、ストライドが合わず効率が悪くなる
→ 小学生のうちは、「膝を上げる=高く上げることが目的」ではなく、「適切な接地と連動した膝の高さ」を意識することが重要。
2-3. 中学生(13〜15歳)
【メリット】
• スプリント動作の最適化が進み、爆発的な加速力を鍛えられる
• 股関節や体幹が安定し、効率的なフォームを習得できる
• 筋力が増し、もも上げトレーニングの負荷を高めても効果が出やすい
【デメリット】
• 身体の成長スピードによっては、無理にフォームを変えると逆効果
• 接地の意識が薄れると、上に跳ねるような走りになりやすい
→ 中学生以降は、ハイニーの高さよりも「接地と推進力の関係」を意識し、実際の走りに直結する形で取り入れるのが効果的。
3. 成長曲線から見る「膝上げトレーニング」の最適な時期
子どもの成長には「スキャモンの発育曲線」が関係します。これは、成長する各器官の発達スピードを示したものです。
3-1. 運動能力と発育の関係
スキャモンの発育曲線では、運動能力に関わる要素は以下のように分類されます。
• 神経型(6〜12歳で急成長) → 走りの基本動作を身につける時期
• 筋肉型(13歳以降で急成長) → 筋力トレーニングが効果的な時期
→ 膝上げトレーニングのベストな取り入れ方は、「小学生で基礎動作を身につけ、中学生以降で筋力強化とともに最適化」すること。
4. まとめ|膝を高く上げることの意味を正しく理解しよう
「膝を高く上げると足が遅くなるのか?」という疑問に対する答えは、「やり方次第」です。
✔ 年齢別の適切な取り入れ方
✅ 幼児期:遊びながらリズム感を養う
✅ 小学生:適切な接地と連動した膝の高さを意識する
✅ 中学生:実際の走りに直結する形でフォームを最適化
✔ 高く上げること自体が目的ではない
• 重要なのは「前への推進力を生むための膝の高さ」
• 無駄に高く上げると逆効果になることもある
• 年齢に応じたトレーニング方法を選ぶ
特に子どもの場合、成長段階に合わせてトレーニングを工夫することで、無駄なく速く走るための技術を身につけられます。
「ただ膝を高く上げる」のではなく、「どのように膝を使うか」を意識することが、足を速くするためのポイントになります。
Comments